こんにちは。個別指導グノリンクの「リンクペディア 3分コラム」を読んでくれてありがとうございます。今回は東大入試の数学に関するワンポイントアドバイスをしていきたいと思います。

問題 (東京大学2020年理系第一問) 

a, b, c, pを実数とする. 不等式

ax2+bx+c>0,bx2+cx+a>0,cx2+ax+b>0をすべて満たす実数xの集合と, x>pを満たす実数xの集合が一致しているとする.

(1) a, b, cはすべて0以上であることを示せ.

(2) a, b, cのうち少なくとも1個は0であることを示せ.

(3) p=0であることを示せ.

 

ワンポイント解説

問題はxについての不等式で, 対称性かつ解がx>pのように表せると言っている時点で条件としては強い.

仮にa, b, cがすべて0でなければ, 今回のそれぞれの不等式の解の表現としては「すべての実数」,「x<α, β<x」,「α<x<β」,「解なし」,「x=α以外のすべての実数」という表現以外はありえない. これを踏まえれば示すべき内容は当たり前のことばかりであり, それを自力で解答にできるかどうかが重要である.

「自力で解答を書けるかどうか」は「人に説明できるかどうか」である. 文章がまとまっているかや, 上手い数学的表現を使うなどは二の次であり, まずはしっかりと人に順を追って説明できる十分な理解をすることがすべてである(私の個別指導の経験上「解答の書き方」が分からないという生徒は, そもそも「その問題を人に説明できるほど理解していない」ことがほとんどである).

あとは下手でも構わないので, 人に説明することと同じ手順でそれを「ただ書いていけばよい」. 数学は「〇〇だから〇〇」の1つ1つが論理的でさえあれば問題はない(文章として分かりやすいかではなく, 内容として論理的かどうかである). あとはその「内容として論理的かどうか」のジャッジは学校の先生であったり, 塾の先生であったり, それぞれの人に合わせたプロに見てもらえばよい. 解答が書けないという人はこれを意識して, 練習してみよう.

それらが出来た上で1つ今回のような問題に対して, 解答を書きやすくする「上手い数学的表現」を記載するならば「十分大きな(もしくは十分小さな)x」や「」などの極限の概念を用いた解答表現である. たとえば, (1)でa, b, cのどれかが負と仮定すると, 解の表現として「α<x<β」,「解なし」が含まれることになるわけだが, これがまずい理由として, 「十分大きなxについて成立しない不等式が存在しx>pのような解の表現にはならない」というような流れを使えれば解答は簡潔になる.

よって「上手い数学的表現」はあくまで解答を簡潔にするだけのものであり(問題集ではこれが多用されるが), 「解答を自力で書くための本質」はあくまで「人に説明できるかどうか」であることを意識してみよう.